ICP-MSの分析精度を左右する要素の一つが内部標準の選択です。「とりあえずロジウムを入れておけばよい」という判断で運用しているラボは少なくありませんが、マトリクスや測定対象元素によっては、その選択が精度を下げる原因になることがあります。内部標準の役割と選び方を、実際の運用経験から整理します。
内部標準が必要な理由 ¶
ICP-MSでは、プラズマの状態変動やイオン化効率の変化によって、同じ濃度のサンプルでも測定値がばらつくことがあります。内部標準は、この変動を補正するために使います。サンプルと同じタイミングで既知濃度の内部標準を添加し、その応答比を使って測定値を補正します。この補正が適切に機能するためには、内部標準の挙動がターゲット元素の挙動と近似している必要があります。
元素の質量数と内部標準の対応 ¶
一般的な考え方として、測定対象元素と質量数が近い内部標準を選びます。軽元素(質量数20〜80程度)にはロジウム(Rh、103)、中質量域(80〜130程度)にはインジウム(In、115)、重元素(130以上)にはビスマス(Bi、209)が使われることが多いです。ただしこれはあくまで出発点で、実際のマトリクスでの挙動を確認することが不可欠です。
マトリクス干渉と内部標準の限界 ¶
高塩分マトリクス(海水・排水など)では、マトリクス成分がプラズマに与える影響が大きく、内部標準による補正だけでは不十分なことがあります。この場合、標準添加法との組み合わせや、オンラインマトリクス除去システムの導入を検討する必要があります。内部標準を入れているから大丈夫、という思い込みが精度問題の原因になるケースを複数経験しています。
実運用での確認方法 ¶
内部標準の選択が適切かどうかを確認するには、分析バッチ内での内部標準の応答変動を記録することが有効です。応答が±20%以上変動している場合は、何らかの問題が起きているサインです。また、認証標準物質(CRM)を定期的に測定し、内部標準補正後の回収率が許容範囲内に収まっているかを確認することも重要です。
まとめ ¶
内部標準の選択は、機器の設定の中でも見落とされやすい部分です。質量数の近さだけでなく、実際のマトリクスでの挙動確認、そして日常的な応答モニタリングが精度維持の基本です。自社ラボのICP-MS運用に不安がある場合は、現状の測定プロセスを一度見直すことをお勧めします。
内部標準の選定や、ICP-MS運用全般のご相談はLab Core Zoneまでお気軽にどうぞ。現状の測定プロセスを診断するところから始めることができます。